2012-02-22

中国に生まれなくて良かった・・・けど、何故か血が騒ぐんだ

『レッド・ダスト 紅塵』(馬 建・著)という本を読んだ。
いろんな人々の書評があふれるネット世界を探しても、数が少ないマイナー本である。

この本は、1984年から3年間にわたって中国全土を放浪した著者による旅日記だ。
文化大革命が終わり、改革開放へと移行する現代中国の転換期。
北京で活動する芸術家であった彼は、自由を求める奔放な姿勢がたたって
当局にマークされ、私生活にも行き詰まって、放浪の旅に出るのだが・・・


ここに描かれるリアルな中国人たちの姿に、はっきり言って圧倒される。
批判を承知で表現すれば、まさに「人間という種類の野生動物」だ。
こんなに世界に、平和で善人な日本人が放り込まれたら、3日と持たずに屍を野に
さらすことになるだろう。
自分が生き残るために、日常的に他人を出し抜き、だまし、奪う。
政府の、なんたら倫理運動やらで、二千何百人が逮捕され二百何十人が処刑され
ました、なんて通知がふつうに貼り出されている日常。

まさに万人の万人による戦争状態。
なのに、ときどき奇跡のように現れる、常識的で親切な善人。これが不思議。

主人公(著者)でさえ、中国を客観的に見つめるまなざしを持ち、自由を求めながら、
貧しく満足な医療もない少数民族の子供を助けてあげたりしながら、
自分のカメラを奪ったチンピラをだまして、しこたま酒を飲ませたうえでぶちのめし、
「彼らは死んだかもしれない・・・」とつぶやく程度で、また旅を続けてたりする。

ほんと、とんでもねえな中国人。こんな奴らが日本に来て●△◎×・・・

そんな感想を持つ、べきところなのだが・・・

なぜか、血が騒ぐ。
何か、中国人に対して羨ましさまで感じてしまう。

パワー?ガッツ?アニマルスピリット?闘志?とにかく、そういうもんが
自分に絶対的に足りない。それを思い知らされる。
拳を握って生きなきゃダメなんだ。そうじゃないから日本はこんな体たらくに
なっちまったんだ。そんな気持ちがフツフツと沸いてくる。

中国人が進出してくる。
それに対して、日本人がやることは批判ではない。怯えてもだめだ。
迎え撃つために、まずはスパーリングだ。
中国共産党の陰謀だの、人民解放軍の野望だの、そういうもんじゃない。
自分が生き抜くために、その人生を賭けて戦いを挑んで来る連中だ。
「いつかギラギラする日」じゃなくて「今日もギラギラする日」だ。

戦争をやろうってんじゃない。
殺し合えと言ってるんじゃない。
自分を剥き出しにして、真正面から食らいつく。
敵対関係だけとは限らない。取引関係、友人、恋愛関係、とにかく人付き合い
というものが、そうなのだろう。

日本の高度経済成長期に、そのアンチテーゼとして「野性」とか「ワイルド」
とかが流行ったときがあったけど、あんなのは甘かった。

中国人に日本人は勝てるのか?
国家とか民族じゃなく、まず一人の人間として。



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