2012-03-17

撮影のための基礎知識 -自分で作る!PR映像制作ガイド-


【6-1撮影編1 撮影の基本1 ショットの種類】

さて、これまでに長々と企画やら予算やら準備の話をしてきました。
自分の経験上、映像作品の制作というのは「準備作業」が全工程の80%
を占めると言っても過言ではありません。私自身、数少ない「準備では
ない」=純粋にクリエイティブな撮影や仕上げ作業は、どんなジャンルの
作品であっても、またいくら困難な作業であっても楽しくなかったことは
ありません。撮影はいつも、明るく楽しく元気よく行きましょう。


●撮影(映像)のための基礎知識
○カット
カットは映像作品の最小単位です。要するに1コの映像、マンガで言えば
ひとつのコマです。カットが作り手の意図(台本)に従って複数組み合わ
されて1本の映像作品となります。
撮影におけるカットとは、カメラを「よ~い、スタート!」と言って回しはじめ
てから「カット!」と言って止めるまでです。
編集する際のカットの概念はこれとは異なりますが、それについては後ほど
編集編で説明します。

○カメラと被写体との距離
撮影を行うときのカメラから被写体までの距離によって、映像をいくつ
かの種類にわけることがあります。
・ロングショット
カメラと被写体の距離が遠いものを、ロングショット(または単に「ロング」)
と言います。遠い分、被写体の全体がすべて映像の中に収まります。
そのため「フルショット」とも言います。
社屋などの大きなビルのロングならば、相当に離れた場所から撮らなく
てはなりません。人物なら5mくらいでしょう。
・ミドルショット
ミディアム(ショット)とも言います。↑と↓との中間です。適当です。
・アップショット
被写体が画面いっぱいに映った状態です。単に「アップ」とも言います。
ビデオで紹介する商品の重要な部分や、重要な働きをする動作や変化
する様子など、強調して見せたいポイントはアップで撮ります。
アップショットの前には、ミドルやロングで被写体の全体像をいったん
見せます。そうしないと、見る人はいきなり出てきたアップショットに何が
映っているのか理解できません。
図1 カメラと被写体との距離














○被写体のサイズ
・フルフィギュア
被写体を人物とした場合、その人物の頭からつま先までの全身を収めた
映像を「フルフィギュア(または略してFF)」と言います。
・ウェストショット
FFから少し寄って、人物の腰のあたりかた頭までを収めるサイズをこう
言います。
この2つのショットは背景が映像内にしっかりと映り込みます。従って
背景と人物との関係を示す場合(例:レポーターが今日はどの場所に来
ているのか説明する)に使うサイズとなります。
・バストショット
「バストアップ」とも言います。何かを話す人物を撮る場合の標準的な
映像サイズです。
・フェイスショット
画面いっぱいに人物の顔が映るサイズです。このサイズはその人の表情
が強調されて、人の印象などがわかる映像になります。そのため、著名
人のインタビュー等、人物の人ととなりを紹介する映像に使います。
企業VPの場合は、製品を開発した人の「熱い思い」などを伝えるときに
は有効でしょう。
図2 被写体のサイズ


















○カメラ位置の上下
・俯瞰(ふかん)ショット
カメラの位置が高く、被写体を見下ろすような映像のことです。例えば
オフィスの全景を撮影するような場合は、なるべくカメラを高い位置に
上げて、室内の奥まで収めるよう(奥行きが見えるよう)に撮ります。
広々としたダイナミックさが表現されます。大都会の空撮も俯瞰ショット
の一種です。

・ローアングル
逆に低い位置にカメラを置いて、見上げるように被写体を撮るものです。
被写体が、立派に・堂々とした・堅固な・強い等の印象を見る人に与え
る映像です。「アオリ」とも言います。
政党の宣伝で、党首や大物政治家を表現するときに使われることがあり
ますが、かえって「怖い」「独裁」のようなイメージにもなります。
「親しみやすさ」を表現するときには使いません。
あと、カメラ小僧さんも一部に多用する人がいるそうです。
図3 俯瞰とローアングル




















○カメラの動き
・パン
カメラの位置を固定したまま、水平方向にアングルを移動させるショッ
トを「パン」と言います。横に長い被写体をじっくりとよく見せるとき
に使用します。

・ティルト(アップ/ダウン)
カメラの位置を固定したまま、垂直方向にアングルを移動させるショッ
トのことです。上方向を「ティルトアップ」と言い、下方向は「ティル
トダウン」と言います。縦に長い被写体をじっくりとよく見せるときに
使用します。
ただし、垂直方向の動きでもいっしょくたに「パン」と言うこともあり
ます・・・というか私は言ってしまいます。

・移動(トラック)ショット
カメラの位置そのものが移動しながら撮影するショットです。基本的に
は移動する被写体と併走して撮る場合です。レールを敷いてカメラを載
せた台車を走らせたり、クルマにカメラを積んで窓から撮影することも
あります。
この台車のことを「ドリー」と言います。そのため「ドリーショット」
とも言います。

・クレーンショット
クレーンにカメラを搭載して自由にアングルを変えながら撮影するもの
です。撮影専用のクレーンは大小何種類もあります。またクレーンにも
車輪が付いていたりして、クレーン+移動で撮影をする場合もあります。

○レンズの動き
・ズームイン/アウト
映像が広い状態から、そこに写っている一点に向かってアップになる
動きをズームインと言い、アップの状態から広い状態へ引いていくことを
ズームアウトと言います。
これは映像表現上、あまり使い勝手のよくない(使えるシチュエーション
が限定される)ショットなので、本講座では紹介しません。

・フォーカスイン/アウト
ピンボケの状態から映像がはじまり、だんだんピントが合っていくのが
フォーカスイン。逆がアウトです。
例えばドラマで「悪夢にうなされる主人公が夢から覚める」シーンや、
回想シーンへ入るところで使うのですが、これも使いずらいショットな
ので、本講座では省きます。

これらが「カット(=ショット)」種類や状態を示す代表的な用語です。
この先の説明でひんぱんに登場しますので、覚えておきましょう。

次回は【6-2撮影編1 撮影の基本2】


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